俺は、珈琲が好きだ。ミルクも砂糖も無い混じりっ気のない、ストレートでちゃんと美味い珈琲が好きだ。これは珈琲に限らず、お茶だろうがなんだろうが、食材そのものの旨さがちゃんと出ているものが一番好きだし、なにより体にも心にもダメージが少ない物が美味しいと思っている。
究極なのは、「美味しいな」という感覚より先に、ダメージなく体と心にすっと入ってくるそういうものが最高なわけで、こと珈琲となると、実は日本国内探してもそんなに多くはないし、僕が知ってる限りでも数える程しかない。その中で、俺があぁここならいいなという店の1つが、このMuiという店の珈琲である。
端的に何がいいかっていうと、「俺のブレンドだぜ」「俺の焙煎だぜ」じゃなく、店主自身が「珈琲って簡単だよ」「これおいしーでしょー、農家さんの手柄だよね」ってさらっと言ってのける事そのマインドにある。そういうところを俺目線で話そうかと思う。
Muiという店
Muiという名は、老子の言葉で「無為を為す」から来ている。店主は2005年にスペシャルティコーヒーの専門店・堀口珈琲に入社後焙煎責任者を務め、2013年に元住吉に「もとえ珈琲」を開業したのち、その3年後、増床移転時に[Mui]となったわけだが、珈琲に携わり15年キャリアもあり、技術的にも信頼感がおける店である。
店主に聞くと、レストラン等への卸しも行っており、その店というのが、
鎌倉のリストランテ・イルノード
四谷三丁目のフレンチ・haru(オーナーシェフは、元ELEZO HOUSEのグランシェフ)
つくばの有名インポーター ヴィナイオータ直営の物販&飲食 だだ食堂
などをはじめ、確かな舌をもつプロも愛用しているとなると、俄然信頼度が増すというものだが、俺の場合、結局のところ誰が使ってようが何だろうが、自分の舌が美味しいと思えなければ何の判断もできないので、ちゃんと飲むわけです。
なぜMuiの珈琲が良いのか?
まぁ、まずは1杯。俺は基本的に身を任す事にしている。「とりあえず1杯」か「冷たいやつ」もしくは、なんかしらケーキを頼んで適当に合わせてもらう。(これの良さはあとで書く)もちろん、豆はいくつも種類はあるのだけどね、だいたいこんな感じでオーダーしてる。自分の感覚じゃないところで出される珈琲を飲んであれこれ発見したいっていう気持ちもあるのだけど、「頭で考えず、しれっと美味い」ってなるから、こうしてる。じゃあさ、そのしれっと美味いって他にあるの?って言ったらあまりないのよね。そもそも頭で考えて「これは美味いよね」っていうのってもうその時点で美味しくないしね。
あとは、これはMuiだけでなく僕が知ってる数少ない珈琲屋に共通しているのが、「苦い」とか「酸っぱい」とかいう一般的に知られている珈琲にありがちなテクスチャがないということ。そもそも焙煎ものなので苦味や酸味ってのはあるけど、それは心地よく楽しめる範囲での話。普通に考えれば、素材がそもそも劣化してるか適切に焙煎してないかフィニッシュの取り扱いが悪いかしか考えられない。苦さや酸っぱいのが珈琲だっていうのは嘘です。理屈として合わない。
で、何でそういう味が出るわけ?ってのをさ、店主に聞いてみたわけだ。
こだわりでも何でもない、至極真っ当な製造
店先の看板にも出ていたのだが、「美味しいご飯を食べたいから、いい米を探すよね。美味しい珈琲を飲みたいから、いい豆を探すよね」じゃあ、そのいい豆を探して、美味しさを引き出して、お届けするよって言うそういうスタンスなので、結局やっている事も文章で書くと非常にシンプルで、
「新鮮で、生産者や品種がきちんとわかっている豆を仕入れし、豆に応じた過不足ない適切な焙煎を施し、傷んでいる豆は手作業でひとつひとつ取り除いて、お届けする」と言う事。
そもそもの素材が0点の物が100点にはなり得ないので、品質の高い豆を仕入れていると言うのは当然だが、適切に過不足なく焙煎すると言う事と、いわゆる品質を損ねる欠点豆を取り除く作業をすると言うのは品質のクオリティを下げない為に重要な作業で、
適切に焙煎しなければ、どれが品質を損ねる欠点豆であるかは分からない。(上記写真でも分かるが、色づきの悪いものが欠点豆)つまり、品質の高い素材を適切に焙煎しないと、最後のピッキング作業時に除去すべき豆が分かりにくくなり、結果品質を落としてしまう。仕入れから最終段階まで1つ1つきっちり仕事を重ねる事で、高い品質の珈琲が届けられいる事が分かる。
ここまで書くと「こだわりの珈琲屋」と思われてしまうのだが、そもそもこだわりでも何でもなく、これが至極真っ当な仕事であると言う。そりゃあそうだよね。例えばフルーツジュースを作る時にさ、わざわざ品質の悪いものを混ぜて作るかね?っていう話と同じ。ええもんを適切に処理して届ける。バケツリレーそのものだよね。100点のものを100点のまま出す。これがやっぱり真っ当な仕事だと思う。
事実、珈琲は簡単。究極、適当でいい。
ここまで書くと、「珈琲って難しい」とか「なんか凄そうで敷居が高そう」ってなる人もいそうだし、実際そう言う人もいるのだけど、確かに難しい部分はある。でもそれは「珈琲屋として携わってる人間のプロの仕事」の段階で実は終了している。我々一般消費者に取っては、難しい事など何1つないわけだ。難しい事を全部やってくれるのがプロなので我々は楽して楽しめばいい。ただそれだけ。
商品名やテクスチャの話もそうだ。どこの国のどの農園でどう焙煎したかはともかく、夏みかんとかチョコレートのようなとか表現も書かれているけど、あくまでこんな感じの商品だよと言葉で伝えているだけの話。単に商品を知るきっかけか他人に共有する時のツールでしかない。ましてや、味わってこう言うふうに感じてくれと言う話でも何でもない。これは珈琲だけでなく全ての事に関わる事だけど、自分の感性を信じて楽しめばいい、シンプルに。
もっと言おう。淹れるのも簡単だ。米を炊くより簡単だ。それこそ、余程ひどい淹れ方(出がらし状態でも抽出しようとするとか、極端な事)をしなければ、誰でも美味しい珈琲を淹れる事ができる。もちろん適切にちゃんと成分を出し切るためには、
・熱々のお湯で(豆って脂あるからね、熱々のお湯でやらないと成分が適切に出ない)
・挽きたての豆で(粉にしたら急速に劣化するし香りも飛ぶ)
・ペーパードリップで(抽出するのに一番とりまわしがいい)
やるのが一番いい。俺なんか、割と適当にやってる。何度もやってるから感覚的に身についているってだけかもだけど、本当に誰でもできる。
ストレスのない美味しい体験をするならお店で。家で楽しむなら通販で。
さて、そんなストレスのない美味しい珈琲だからさ、さぞかし高いって思うじゃない?でも、意外とそうでもないんだよね。ここの珈琲豆って、だいたい200gで1,500円前後が価格。だいたいこれで13〜15杯はとれる。そうすると、だいたい1杯100円ちょっとだ。そうすると、だいたい缶コーヒー1杯分以下くらいじゃなかろうか。それなのに、最高に素敵な旨さと香りが楽しめるわけだから、全然安いよね。コーヒーミルだって安価な物でも充分だし、比較的投資額少なくても最高な旨さや時間が手に入る。
もちろんミルを持ってなくても大丈夫、店頭で挽いてくれるから。気軽に楽しもう。
でも、まずは体感して欲しいね。東京・神奈川の住人だったら、さらっと東急東横線(今だと副都心線や西武・東武と乗り入れているから、埼玉の人も良かろう。)で元住吉駅を降りて、そのままブレーメン通り商店街を歩いて行けば、Muiはすぐそこにあるのだが、まぁ世はコロナな情勢なので通販で買うのもおすすめします。
通販で買っても珈琲の淹れ方が分からないとか不安なら、こんまりメソッドでお馴染みの、『KonMari Media Japan』社内向けセミナーとして採用された無料オンラインセミナーつきのお試し商品を購入するといい。
店での珈琲の楽しみ方は、口内調理にあり。
お店に訪れる事があるなら、ぜひ試してもらいたいのが、珈琲と、これまた真っ当につくられた甘味とのマリアージュ。
単品単品、当然のことながら、何も考える余地を与えない「あぁうまい」が体感できるのだけれど、日本人・日本ならではの感覚である「口内調理」がここで生きてくる。珈琲を飲みながらケーキを食べ、そのマリアージュを楽しみ、そこに生まれる感動は、店でしか味わう事ができないし、これこそが来店するべき理由であると俺は思う。それはそうだよね、ガチのプロが計算し尽くして、出してくるのだもの。ここにプロの気概を感じるわけです。もちろん、自宅でも楽しめるけれども、美味しいとか感動の基準というのはここでインプットしていくといいと思います。
また、店主は珈琲屋ではなく、うちは「うまいもの屋」と言っている。それを証拠に、確かに珈琲以外の美味しい物が売られているので、新しい発見をするのにも訪れる価値があります。
※2020年9月19日追記
Muiの店主が、珈琲の抽出の事について書いたので紹介します。
ちなみに、追記の方が、なかなか鮮烈な内容になってます。